【FFT_SS】ラムや
宝瓶の月18日
終日薄曇り肌寒し
隣家より猪肉をもらう。
ラムザ達がオーボンヌ修道院で姿を消してから、今日でちょうど二月になった。ドーターでラムザと別れてからは六十二日になる。ラムザはまだ戻らない。
二月たってもまだ、あの日のことを何度でも思い返してしまう。他にわずかでも寄る辺のある者は去ってほしいと、ラムザは言った。その通りだと私も思った。最初に私の名が呼ばれて、私はとても面食らった。
続きを読む【FFT SS】その後の素敵な商売
磨羯の月8日
風邪を引いた。
「アグリアスさん、お加減はいかがですか」
「うん……」
あの晩、雪の中へ飛び出したのが、まだ尾を引いているらしい。我ながらヤワになったものだと思うが、いつにもまして熱心にラムザが看病してくれるのを見れば、そう悪い気分でもない。
「ラムザ……あまりそばにいると、うつるぞ。ほどほどでいい」
言いはするが、
「そんなわけにはいきません。僕の体よりアグリアスさんの体の方が大事です」
なんてことを言われると嬉しくなってしまうのであった。
続きを読む【FFT SS】闇夜
僕がその事件に遭遇したのは、まったくの偶然だった。
ジークデン砦の惨劇より十日ほどたったある日。僕はレナリア台地からガリランドへと至る山道を、人目を避けるように歩いていた。想像したくはないが、僕は公然と北天騎士団へ反旗を翻したのだ。兄達とて、追手を差し向けないわけにはいかないだろう。
続きを読む【FFT SS】あなたの鼓動に
今までに修得していないジョブを選ぶのは個人の自由ではなく、合議制になっていた。集団で戦いに出る以上、身につけているアビリティのバランスが大切になってくるからである。
それ自体に異義はない。しかし、今回の決定は、どう考えても無理がある。
アグリアスは数時間思い悩んだ挙げ句、深夜にラムザの天幕を訪れた。
続きを読む【FFT SS】いいわけ
五十年戦争の終結以来、畏国のあらゆる場所を貧しさが覆い尽くし、潤いを求めて大小様々な
徒党が溢れ返るようになったが、その内情は実に様々だ。
利用するだけ利用され、終戦と共に切り捨てられた敗残兵たちの義賊もあれば、田畑を捨てた
元農夫の連中もいるし、数組の世帯が集って結成された、キャラバンのような山賊たちもいる。
続きを読む【FFT SS】麗しのレーゼ
五十年戦争の終結以来、畏国のあらゆる場所を貧しさが覆い尽くし、潤いを求めて大小様々な
徒党が溢れ返るようになったが、その内情は実に様々だ。
利用するだけ利用され、終戦と共に切り捨てられた敗残兵たちの義賊もあれば、田畑を捨てた
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