FFT_SSの日記

インターネッツにあるFFTのSSや小説を自分用にまとめてます。

【FFT SS】恋のバトル!?

 

今日の戦闘も終え、野営の準備も終わり、

各自思い思いの時間を過ごしていた。

 

ムスタディオとマラークはオルランドゥ伯の指導のもと、

ひいひい言いながらひたすら腕立て伏せにいそしんでいる。

ちなみに伯は鬼コーチとして仲間内では有名である。

ラファやアリシア達は彼らの苦悶の表情を隠れて見ては笑い転げている。

 

 

少し離れた所では、

レーゼがベイオウーフに膝枕をしながら、なにやら楽しそうに談笑していた。

 

近くにいたラムザが、目のやり場に困ったようにメリアドールに話し掛ける。

「あの2人は相変わらず仲良いね。僕たちの目なんか気にしてない感じ…」

「ふふっどうしたのラムザ?羨ましい?」

「えっ…ま、まあ羨ましいっていうかなんていうか…」

「…いいのよ、遠慮しなくても。じゃ、私がしてあげようか?」

メリアドールが笑いながらどきりとするような事を言う。

「うっ、か、からかわないでよ。ほ、本気にするだろ?」

(…本気にしていいのにぃ…もう…)

「えっなんか言った?」

「ううん、なんでもない」

メリアドールはそう言って目の前の草花をいじっている。

 

そこへアグリアスが、ずかずかと一直線にラムザ達の所へ向かってくる。

 

「あ、アグリアスさん、もう剣の素振りは終わったの?」

アグリアスに気づいたラムザが、いつもの調子で話し掛ける。

「…いや、素振りは今日はやめだ」

「え?じゃあ今日は終わり?」

「あ、いや…」

アグリアスは少し詰まったが、意を決したように言った。

「実は…今日は久しぶりに剣の相手をしてもらおうと思ってな。

見た所、お前は暇そうだから付き合ってくれないか?」

「あ、うん…いいけど…」

ラムザは以前、アグリアスに誘われ剣の相手を務めた事を思い出した。

(アグリアスさんって夢中になるっていうかむきになるっていうか…

とにかくきついんだよな。次の日筋肉痛だったし…)

 

「もしよかったら私が相手になろうか?」

メリアドールがなぜか話に割って入る。

「う…」

アグリアスは思わずどもる。それもそのはず。

以前、ムスタディオと考えた作戦を実行しラムザと2人きりになりたかったからだ。

「じゃあ3人で交代しながらやろうよ」

「そうね、そうしましょう」

「わ、分かった。そうしよう」

(3人では作戦どころじゃないな…)

2人の同意に押し切られる形でしぶしぶ同意するアグリアスだった。

 

テントから少し離れた所で、

練習用の剣を持ち相対するラムザとアグリアス。

メリアドールはそばでそれを見守っている。

やがて実戦さながらの迫力で練習が始まる。

 

「やあっ」

「はっ」

ガキンッ!!キン!!キン!!キン!!

激しい剣のぶつかり合い。練習用の剣なので大怪我する事は無いが、

まともに受ければ打ち身ぐらいは当然なるので、

ある程度は加減するのが暗黙のルールである。

 

しかし、アグリアスは性格的に元々熱くなるタイプ。

練習を忘れて真剣になる事がよくあり、

アリシアやラヴィアンなどはよくえらいめに合わされている。

2人は練習の頃合になると、

そそくさと彼女から距離を取り始めるのも最近よくある光景だ。

そして、今日もアグリアスの悪い癖が出始めた。

 

カンッ!!キン!!キン!!キン!!

………

「ねえ、そろそろ休憩したら?」

メリアドールが心配そうに声を掛ける。

「はあっはあっ…ぼ、僕もそう思うんだけどっ…」

「はぁっはぁっ、ま、まだまだっ。どうしたラムザ!いつもの勢いが無いぞ!」

こんなやり取りが繰り返され、一向に終わる気配が無い。

やがて…

「やあっはっ!!…えっ!?わっわっわわわっ」

 

ずって~んっ!!!

「ああっラムザ!大丈夫!?」

石に足を引っ掛け、背中から思い切り転んだラムザに

メリアドールが心配そうに駆け寄った。

「いたたた…」

ラムザは思わず苦痛の声をあげる。

「あ…だ、大丈夫か?ラムザ」

アグリアスもラムザのそばに駆け寄る。

「ちょっ、ちょっと!アグリアス!やりすぎよやりすぎ!!

だから休憩したらって言ったのに…」

メリアドールが明らかにアグリアスが悪いと言うように非難する。

「う…す、すまない。つい熱中してしまって…」

アグリアスは申し訳なさそうに縮こまる。

「あ、いいよ。僕が勝手に転んだだけだから」

ラムザがフォローを入れる。が…

 

「よくないわ。ラムザはこの隊の長なのよ!

もし大怪我でもしたらどうするのよ!」

メリアドールが珍しく感情をあらわにする。

「あぐぅ…」

ますます小さくなるアグリアス。

「…そんなに練習したいなら私があなたの相手になるわ」

メリアドールはそう言ってラムザの剣をなかば奪い取るように掴む。

「お前が?」

「そうよ。私じゃ不足かしら?」

と、メリアドールが挑発するように言った。

「いや…お前がそう言うなら望む所だ。相手になる」

そう言って、アグリアスも再び剣を構える。

 

(なんか…やばい雰囲気…)

2人のやり取りを聞いていたラムザが険悪ムードを察知する。

「ねえ、アグリアスさんも疲れてるでしょ?今日は終わりにしようよ」

「いや、大丈夫だ。ラムザは休んでいてくれ」

「ラムザ…彼女がそう言ってるんだから気にする事無いわ」

「あ、そ…そう。じゃあ見てるけど、とりあえず怪我には気をつけてね」

ラムザも諦めて展開を見守る。そして2人の練習が始まる。

 

ガンッ!!キン!!キン!!キン!!キン!!キン!!キキキキキン!!

 

さすが2人とも名の知れた剣士だけあって、

すさまじく早い展開だ。なぜか2人とも手加減していないようにも見える。

 

「はぁっはぁっ…さすがねアグリアス…」

「お前こそっ…はあっはあっ」

ガキーン!!ギリギリッ…

2人の剣が交差し、動きが止まる。

 

「私のラムザにあんな事して…許さないわよ…」

メリアドールが小さい声で目の前のアグリアスにささやく。

「なに?」

(私の?…)

アグリアスは思わずカチンッときた。

「おまえこそ…いつもいつも…」

2人は練習である事を忘れてにらみ合う。

 

「ちょ、ちょっと2人とも。念のために言うけど、練習だからね」

 

「分かってる!!」「分かってるわよ!!」

「わわっ」

2人同時の怒気を含む返事に、ラムザは思わず驚く。

 

バシンッ

2人はようやく離れ、そして再び剣を構えなおす。

「…次は手加減しないわ…アグリアス、覚悟はいい?」

「望む所だ!!」

(わーっ2人とも本気になってる!ど、どうしよ…

こ…このままじゃどっちかが怪我しちゃう…)

2人がお互いにむきになっているのを感じ取ったラムザが慌てふためく。

 

「はぁぁぁぁっ…冥界恐叫打!!!」

「我が腕をして閃光とならん!無双稲妻突き!!!」

「わぁぁっ!!あっ危ない!!!」

 

2人の剣撃がお互いを襲おうと交差する瞬間!!!

ズガガガーーーンッッ!!!

「うわあーーーっ!!!!!」

 

「ああっ!!」「きゃああああっ!!!」

 

2人の間には、お互いの攻撃をまともに食らって、

ぴくりとも動かず倒れているラムザの姿があった…

「わぁーーっ!ラムザラムザラムザぁーーーっ」

「いやーっ!!ラムザぁーーーっ」

2人は状況を把握したとたん、一気に顔が青ざめラムザに走り寄る。

「う、うう…」

ラムザはうめくのみで全く動かない…

「あ、ああ…ど、どどどっどうしよう…」

さーっと血の気が引いて青ざめるアグリアス。

「えっえっ?私達…あわわわ…」

うろたえるばかりで半泣きのメリアドール。

2人はパニックに陥り、治療をするという選択肢が頭に浮かばない。

 

「どっどうした!?何かあったのか!?」

「きゃっきゃあ!!ラムザっ!?どうしたの!?」

騒ぎを聞いて駆けつけたベイオウーフとレーゼが

何が起こったのか分からないという感じで驚き戸惑っている。

「あのっあのっそのっ…」

「ええ、えっとっ…あわわわ…」

2人はまさか自分達がやったとはとっさには言えずどもるばかり。

 

ようやく状況を把握したのか、ベイオウーフがラムザの状態を見る。

「えらい怪我だ…とにかく早く治療だ!レーゼ!」

「ええ、任せて。」

「しかし…一体何に襲われたらこうなるんだ?」

ベイオウーフとレーゼは治療をしながら首を傾げる。

「…」

「…」

アグリアスとメリアドールの2人は目を合わせて、2人してしょぼん、となる。

(ラムザ…ごめんなさいごめんなさいごめんなさい…)

2人して心の中で謝る。

 

そして―――

ラムザの治療が一息ついた頃、

ラムザに大怪我をさせたのは私達です、と自首する2人。

レーゼとベイオウーフ、オルランドゥ伯を交えて、

こっぴどく叱られる2人の姿があった…

 

 

~fin~

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