FFT_SSの日記

インターネッツにあるFFTのSSや小説を自分用にまとめてます。

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ある街の夜のバーにて…

カウンターの片隅でめずらしくラムザが杯を傾けていた…。

いや、もといミルクを傾けていた…。

 

「ラムザ、待ったか?すまんすまん」

申し訳ないそぶりを全く見せずに言いながら、ムスタディオが隣りに座った。

「で、なんだ?話って」

「あ、うん、実は…」

 

 

 

ラムザは最近、ムスタディオとアグリアスが2人でよくいるのが気になっていた。

さりげなく聞こうと思うのだが、

いきなりそれを聞くのも唐突過ぎるので思わず言葉に詰まってしまった。

 

「うん?なんだ、遠慮するなよ。言いにくい事か?」

「え、えーと…そっそう、実は…僕って…役に立ってるかな?」

ラムザは思わずへんてこな事を言う。しまったと思うがもう遅い。

「なに言ってんだ?役に立つ?戦いでって事か?」

「あっそ、そうかな…うん、じ、実はそうなんだ。

だ、だってオルランドゥ伯やアグリアスさんの剣技はすごいじゃない。

ムスタディオだって銃の扱い方すごくうまいし…」

ラムザはとりあえず話を続ける。

 

「ま、俺やアグ姉の事は置いといて、オルランドゥ伯は特別だよ。

あんなのと自分を比べるなよ。落ち込むだけだぞ」

「そ、そうだね。け、けどみんなが僕の事、どう思ってるか気になるなーなんて」

ラムザは遠まわしにアグリアスの事を聞きたくてしょうがない。しかし…

 

「うーん、お前だって特技あるじゃんか」

「え?…そうかな?どんな所?」

「うーん、例えば…そう、お前の投石…あれ、百発百中じゃねえか?」

「…………………僕を…からかってるんだよね?」

「そんな事無いぞ。それに…あのお前の体当たり、

あれでよく敵が吹っ飛んでるじゃないか。あれも凄いぞ」

「…うぅぅっ…な、何だよそれ!ぜんっぜん戦況に関係ないじゃないか!

そんなの、そこら辺の見習い戦士だってできるよ!!

もう!ムスタディオに聞いた僕がバカだったよ。もういい!」

そう言って拗ねた顔で、ぐいっとミルクの入ったグラスを空にする。

 

変な事を気にするな、と思いながらもムスタディオは続ける。

「けどこれだけは言える。お前にしかない、誰にも真似できない事があるぞ」

「…なに?」

ラムザはグラスを眺めたまま、まだ少し不満そうに返事する。

「それは…魅力、お前の人間的魅力だよ。

な、考えても見ろって。あのオルランドゥ伯やアグリアス、メリアドールのような

百戦錬磨の剣士達がお前について来るんだぜ。」

「…」

 

ラムザは黙って聞いている。

「同じ目的を持つ者同士とはいえ、黙ってお前について来てくれるんだぜ。

それだけでもすごいぜ。

それに、彼らはお前のためなら命だって賭けるはずだ。」

「そ、そうかな?命は賭けられたら困るけど…」

「ああ、絶対そうだ。それに…俺もその一人だ!」

そう言ってムスタディオは親指を立てて、びしっとポーズを決める。

 

「…ぷっ」

「なっなんで笑うんだよ。ここは感動する場面だろうが!」

「ご、ごめんごめん。だって真面目な顔して言うんだもん。

…けど、ありがとう。そう言ってもらうのは素直に嬉しいよ」

ラムザはそう言って笑う。

(むむむ…アグ姉にも同じ事言われたな。まぁいいけど)

やっぱり彼には真面目な台詞に決めポーズは似合わないようである。

 

(ふむ、アグ姉といえば…そうだな…ちょっとアシストしとくか)

「なぁ、ラムザ。この前アグ姉にスープ引っ掛けられたろ?」

「え?」

ラムザは急にアグリアスの話になった為思わず表情が明るくなる。

「あのさー、この前あいつがその事で落ち込んでてさ。

ちょっと相談に乗ってやってたんだ」

「へえ、そうなんだ」

(あ、あの時かな?)

ラムザはアグリアスとムスタディオが2人で酒を飲んでいた事を思い出す。

 

「気にするなって言ったんだけどだめでさ。

なぁ、お前からも気にするなってもう一度言ってやったらどうだ?」

「そ、そうだね。うん、うん」

ラムザの顔に笑顔が戻る。

「よしよし、じゃ、善は急げだ。早速アグ姉の所に行ってやれよ」

「…そ、そうしよかな。…うん、ありがとうムスタディオ」

そういってラムザはなにか吹っ切れた感じでアグリアスの部屋に向かった。

 

コンコンコン…

「アグリアスさん、ちょっと、いいですか?」

「え?ラムザ?…あ、うん…入って」

アグリアスは突然のラムザの訪問に胸が高まる。

 

ガチャ…パタン

「ごめんねアグリアスさん、寝てました?」

「いや、大丈夫だ。…何か用か?」

「うん、ちょっと…どうしてるかなって思って…」

ラムザは久しぶりの2人きりの展開に緊張して思わず話題をそらしてしまう。

「あ…そ、そう」

気まずい沈黙が流れる。

やがてアグリアスがこの沈黙を破ろうと思いついたように言った。

「あ、そ、そうだ。あの時の…スープ…熱かったろ?

…すまない、私は慌て者だから…本当にすまないと思ってる」

あの事を思い出し、真っ赤な顔をしながらぺこりと頭を下げる。

 

「あ、気にしないでアグリアスさん。僕、全然気にしてないから。

それに…少し嬉しかったし」

「えっ…嬉しい?」

「うん、だってアグリアスさんが僕の為にしてくれた事でしょ。素直に嬉しいよ。

またあんな事してくれたら嬉しいなぁ、なんてね。あははっ」

「ラムザ…」

アグリアスはラムザが嬉しいと言ってくれた事に思わず口走る。

「お、お前がしてほしいって言うなら…わ、私は…いつでも」

「え?僕に…ほ、ほんとに…」

「う、うん…」

しばし固まる2人。

 

「あ…ご、ごめん、長居しちゃったね。あ、アグリアスさん…じゃ、明日」

「あ、うん…おやすみ」

ラムザはドアに手を掛けたが、ぴたりと止まる。

「あ、明日…き、期待してるからっ…おやすみ!!」

ガチャッバタンッ!どたたたたっ

そう言ってラムザは逃げるように出て行った。

彼が出て行った方向をぼーっと眺めながら、

ラムザの言葉にどきどきしながら立ち尽くすアグリアスだった…。

 

翌日の朝食―――

ラムザの隣りに座るアグリアスの姿があった。

メリアドールもアグリアスのいつもと違う雰囲気に少し戸惑っている。

ラムザからお皿を受け取る時に思わず照れて目を逸らし、

ぎこちないながらもおかずをよそる彼女の姿は、

まるで新妻のようであった、と後にムスタディオは証言している。

 

 

~fin~

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