FFT_SSの日記

インターネッツにあるFFTのSSや小説を自分用にまとめてます。

【FFT SS】思わぬ勘違い!?

 

静かな夜の寝室になにかうめくような声が聞こえる。

「あうぅ、うう…す、スープ…スープがぁ…」

 

(バッシャーン!!)

(わぁーーーーっ!!!)

 

「Σ(゜Д゜;)はっ!!」

 

周りが寝静まる真夜中に、アグリアスはがばっとベッドから身を起こした。

「はぁ、はぁ…またあの夢か…」

アグリアスはついこの間、ラムザの顔にスープをかけてしまった、

あの悪夢のような出来事をたびたび夢に見るようになっていた。

しかも夢に見れば見るほどスープをかけてしまう量が多くなっている気がする。

本人以外は笑い話程度で大して気にしてないのだが、

純情なアグリアスにはもうトラウマになっていた。

 

「だめだ、あれからいつもこれだ。このままでは体がもたないな…」

じっとりと汗をかき肌にぺったりくっつく服を不快に感じながら、

今日も寝苦しい夜を迎えているのだった。

 

翌日の戦闘中―――

アグリアスの攻撃!!

「無双稲妻突き!!」

ぱりぱりっぱこんっ…

…し~ん…

 

ラファの攻撃!!

ズシャァァァァッ!!

ギャォォォォォン!!

 

そして戦闘が終わる。

会心の勝利で皆すがすがしい充実感を憶えていた。約一名を除いて。

みんながわいわい言いながら休憩している所から少し離れて、

なぜか四つんばいになって、がっくりとうなだれるアグリアスの姿があった。

(まったく…なにやってんだあの人は?)

ムスタディオが呆れたようにため息をつく。

ほっとくのも夢見が悪いので、とりあえずかまってやることにした。

 

ムスタディオがアグリアスのすぐそばまでやってきた。

「…なんだ?…笑いに来たのか?」

「まぁ、そんなとこかな?」

アグリアスは何も反論しない。

「あの事はそんなに気にすることないぞ。

ラムザだって気にしてないって言ってるじゃないか?」

「…」

「…まぁ、落ち込むのはあんたの勝手だけど

戦いの最中にまでそれを持ち込むな」

「ちっ違う!!落ち込んでなんかいるか!!」

アグリアスはついかっとなって声を荒げる。

「じゃあさっきのあれはなんだよ?

あんたの無双稲妻突きが、まるで静電気みたいだったぞ?」

「むぅぅぅぅっだっ誰のせいだ誰の!!……………………………………ま、私のせいなんだが」

そう言ってさらに落ち込む彼女を見て、さすがに悪いと思ったか

ムスタディオはなんとかしてやるかという気持ちになる。

 

「まぁ、あれだ。俺もちょっとは責任感じてるんだ。

なんせ、あんたにああいう事やれっていう方が間違ってたんだ」

「…いや、気にするな。あんな事さえできない私がダメなんだ」

「まあまあそう落ち込むなよ。あの事はすっぱり忘れて、

あんたでもできるアプローチを考えようぜ。」

「…私でもできる事?」

「そう。なんなら今日の夜にでも作戦会議といくか?」

「…」

「何もせずにちんたらしてても、あいつの気は引けないぜ。なっ」

「…そうだな、おまえの言う通りかもな」

「よし、決まりだ。夜になったら酒でも飲みながら作戦タイムだ」

こうして話がまとまりかけたころ…

 

「ねぇ、アグリアス様とムスタディオがまた話してるわ」

アリシアが目ざとく見つけてそんな事を言う。

「どうしたのかしらね?アグリアス様って、てっきり…」

ラヴィアンはそう言って、ちらりとラムザの方に目を向ける。

「でも意外っぽいけど、あの組み合わせもいいかもね」

「そうね、ひょっとしたら…ひょっとするかもよ?」

「うふふふっ」

 

そんなやり取りがラムザの耳に入っていた。

ちらりとアグリアスの方に目をやり、複雑な顔をするラムザだった…。

 

街に到着し各自夕食を取った後、思い思いに過ごす時間がくる。

部屋に戻ろうとしたアグリアスをラムザが呼び止めた。

「ねえアグリアスさん、今…」

「あっ、らっラムザ…ご、ごめん。忙しいんだ」

「あ…」

アグリアスは彼の顔を見るなり、ばつが悪そうに足早に離れていった。

(…話し相手になって欲しかっただけなのに。

なんか最近僕の事相手にしてくれないな…なんでだろ?)

そう考えながら肩を落として立ち尽くすラムザだった…。

 

しばらくして、アグリアスとムスタディオはバーのカウンターで酒を傾けていた。

もちろん対ラムザ用の作戦会議である。

 

「はぁ…」

アグリアスは手に持った赤ワインが入ったグラスを眺めながらため息をつく。

先程からムスタディオがいろいろとアイデアを出してくれるのだが、

そのどれもが自分にはできそうにないものばかりだったからである。

「なぁ、どれかにしてもらわないとこっちも困るんだけど」

「けど、恥ずかしい事ばかりだ。また失敗するのが目に見えている。

もっと…こう、普通の感じでできるのはないのか?」

「普通のって言ってもなぁ…うーん…」

ムスタディオはもう他に無い、という風に考え込む。

 

その時、ムスタディオの頭にいいアイデアが浮かんだ。

「あった、あったぞ!これならアグ姉でもできる。いや、これはあんたにうってつけだ。」

「え?それは…なんだ?早く言え」

アグリアスも思わず身を乗り出す。

「練習だよ、練習!剣の練習にラムザを誘うんだよ。

これなら自然だし、しかも2人きりになれるって特典つきだ」

「…そうか、そうだな。それなら私にもできる。

おまえもたまには良い事言うじゃないか。…よし!」

「決まりだな。早速明日にでも…」

 

その時…

「あっ、ムスタディオ!ちょうどいい所に…えっ?」

ラムザがムスタディオを見つけて声を掛けてきたのである。

「やあラムザ、なんだ?用か?」

「…あ、アグリアスさん…」

とたんにラムザの表情が曇る。

 

「は、はは…な、なんか、ひょっとして僕、邪魔だったかな?」

「え?お・おい、何言ってんだおまえ?」

ラムザがずるずると後ずさる。

(ひょ、ひょっとして勘違いされてる???)

思わずアグリアスとムスタディオは目を合わせる。

 

「ごっごめんなさい。じゃ、僕これで!おやすみ!!」

「あっラムザちょっと待って!」

アグリアスの静止を振り切ってラムザはダダダダッと走り去っていった。

 

……

思わず2人は沈黙してしまう。そして…

「わぁーーっ、どっどうするんだ!?完全に勘違いされてしまったじゃないか!」

「ぐっぐるじい~っおっ落ぢづげ!!」

頭を抱えて慌てふためくアグリアスは、詰め寄ってムスタディオの首を掴んで離さない。

「わぁぁぁっもう完全に嫌われた!もういやだーーっ!!」

アグリアスはそう叫んでカウンターに突っ伏して自暴自棄に陥る。

まるで駄々をこねる子供のようにも見える。

 

「げほっげほっ…。はぁはぁ、何も首締めるこたないだろ…

くそっあいつも早とちりなんだよ。ったく!……うん?あれ?」

ムスタディオは息を整えながらも何かおかしい事に気づく。

「…なぁアグ姉、ちょっといいか?」

「…なんだ、作戦ならもういいんだぞ。もうほっといてくれ」…いじけるアグリアス。

 

「違うんだ、よく考えてみろ。

あいつは俺達を見て仲がいいと勘違いしたんだぞ。どういう意味か分かるか?」

「???」

「ほら、俺達が2人きりで話してるのを見た時の、あいつの狼狽ぶりを見たろ?

あいつは…俺達に妬いてたんだよ」

「…え?そ、そういえば…」

アグリアスの表情がぱっと明るくなる。

「やったっやったじゃんか!あいつはちゃんとお前の事気にしてたんだよ」

「ら、ラムザが…私に?…」

ぽっ

アグリアスの顔がとたんに赤くなる。

「まぁ、とりあえずは作戦成功って事になるのかな?この場合…」

思わぬ展開で功を奏した事がムスタディオには不満のようだ。

 

「ラムザが…私に…うふふっ…」

遠い目でつぶやくアグリアス。

それを見てムスタディオが釘を刺すように言った。

「…といってもあいつは俺達の仲を誤解したままだからな。

まずはあいつの誤解を解くことが先決だ」

「そうか、そうだな」

アグリアスはうん、と頷く。

「とりあえずさっきの作戦を近いうちに実行しろよ。

そこで誤解を解いて、さらに仲が深まれば一石二鳥だろ」

「…わかった。よし、なんか希望が出てきたぞ。今日はぐっすり寝れそうだ。うふふ…」

 

ラムザのあの顔を思い出しながら、アグリアスは笑顔を隠せないのだった。

 

翌朝―――

「あ、アグリアスさん…お、おはよう…」

アグリアスを見て、沈みがちな声で朝の挨拶をするラムザ。

「あっおはようラムザ!今日も良い天気だな」

アグリアスはそう言ってにっこり笑ってラムザに挨拶をする。

 

(え?アグリアスさんが僕見て笑ってる…なんか久しぶり…)

 

「どうしたんだ、私の顔に何かついてる?

さっぼーっとしてないで、朝食の準備しようラムザ」

「あ、うん。そうだね」

(…昨日のあれはなんだったんだろ?ま、いいか。アグリアスさんが笑ってくれてるんだし。)

 

まだ冷たい空気が彼らを包む、雲ひとつ無いすっきりとした青空の下で、

久しぶりに笑顔でいる2人だった。

 

 

~fin~

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